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客船に対するスプリンクラーの設置
IMOでは、現存船に対するこれらの遡及適用の実績を契機とし、また、新造船と現存船の安全性のギャップを埋めるべしとの意見も増加したことを受け、船舶の構造に関する新たな規制を現存船に対し適用する場合のガイドライン作りが行われている。この「グランド・ファーザー・クローズの系統的適用のための暫定ガイドライン」(案)は、新船と現存船との間で基準の不当なギャップを避けるための方策を提供するものとして開発された。これによれば、IMOの委員会及び関係小委員会は、現存船に対して提案される新たな規制については、以下に示す「関連要素」を考慮して、その受け入れ可能性を評価し、決定を行うこととなる。より系統的かつ客観的な意志決定を促進するため、各要素毎に重みをつけた得点を計算し、その合計得点により判断する方法が提案されている。
?その安全問題の解決への寄与との関係における当該措置の費用
?当該措置の実施に必要な設備の入手可能性
?当該措置の実行可能性
?メンバー国の立法上及び管理上の負担
?条約改正を頻繁に又は短期間に行うことが望ましくないこと
?実施のタイミング
?当該措置を維持することの容易性
?当該措置の信頼性
新基準を現存船に対しても適用する傾向は今後ますます強くなると考えられるが、まもなく上記のガイドラインが採択されるため、今後はIMOでは、可能な限り客観的な判断基準に基づきグランド・ファーザー・クローズの運用が行われることが期待される。しかし、各関連要素の重みの付け方や得点の計算はケース・バイ・ケースで各国の意見をべースに行われることとなるため、我が国としても我が国の実態を踏まえた適正な対応が必要となろう。また、船舶の構造に関する新基準の現存船にへの適用を考える場合は、その新基準と同程度の効果が期待できるような代替規制措置であって構造の改造を伴わないもの(例えば強化検査の実施等)の可能性を検討することも必要と思われる。
(以上)

 

 

 

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